公益認定等ガイドライン(令和8年7月改訂)を読み解く

内閣府より「公益認定等ガイドライン(令和8年7月最終改訂)」が公表されました。
<公益法人information:公益認定等ガイドライン>
https://www.koeki-info.go.jp/regulations/a846rbz72g.html
今回の改訂では、主に以下の内容が見直されています。
⑴令和8年4月の公益信託法施行を踏まえ、公益法人が公益信託に関わる場合の考え方を追加
⑵公益法人の資産の活用について
・アセットオーナープリンシプルや、いわゆるDAFに関する留意事項を追加。
・運用しつつ取り崩しを行う金融資産の取扱いの明確化
⑶「出資」事業についてのチェックポイントを追記
⑷事業計画書及び収支予算書に関する説明の拡充
⑸申請書記載事項の取扱いの明確化(事業計画・変更認定申請時)
⑹その他
(同姓パートナーに関する記載の追記、区分経理に関する記載の趣旨の明確化、監督に係る取扱いの追記、「公益法人合併ガイド」(令和7年6月)の内容の紹介、寄附された財産の使途の指定方法の明確化等)
制度そのものを大きく変更する改正ではありませんが、公益法人制度改革を踏まえ、公益法人の運営やガバナンスに関する考え方をより明確にし、実務上の判断基準を整理した内容となっています。
今回は、その中でも特に実務への影響が大きいと感じた4つのポイントをご紹介します。
目次[非表示]
実務への影響が大きいポイント4選
① 公益法人が公益信託に関わる場合の考え方を追加
今回のガイドラインでは、公益法人が公益信託の受託者や信託管理人となる場合の考え方が新たに整理されました。
具体的には、以下のような点について考え方が示されています。
- 受託者・信託管理人として行う業務は、その内容に応じて公益目的事業または収益事業等として位置付けられること
- 信託財産は法人固有の財産とは区分されるため、法人の財務諸表には計上せず、独立して管理すること
- 事業計画書や事業報告書には、公益信託の名称や認可行政庁、受託者・信託管理人として行う業務の概要などを記載すること
- 公益法人と公益信託を所管する行政庁が相互に連携し、情報共有を行うこと
- 公益信託法の施行に伴い、公益信託への残余財産の贈与や、移行法人の公益目的財産の支出方法として公益信託への寄附(特定寄附)が可能となったこと
今後、公益法人が公益信託に関わる場合は、これらの考え方を踏まえた事業運営や会計処理、各種書類の作成が求められます。
公益信託とは?
公益信託とは、公益活動を目的として財産を信託する制度です。例えば、「奨学金事業を続けてほしい」「地域文化を支援したい」「環境保全に役立ててほしい」といった思いを持つ個人や企業が、現金や有価証券などの財産を信託銀行等へ預け、その財産(信託財産)を活用して公益活動を行います。公益法人と公益信託は、どちらも公益活動を支える制度ですが、その仕組みは異なります。公益法人は法人自体が主体となって公益事業を実施するのに対し、公益信託は信託財産を主体として公益目的に沿った助成や事業を行います。

② 区分経理の趣旨がより明確に
令和6年会計基準では、収益事業等を行わない法人について、貸借対照表における区分経理を省略できる場合があることから、「もう区分経理は不要なのですか?」という質問を受けることが少なくありません。
今回のガイドラインでは、その誤解を避けるため、区分経理は会計処理そのものが目的ではなく、公益法人の財産を適切に管理し、説明責任を果たすための仕組みであるという趣旨がより明確になりました。
つまり、貸借対照表上の区分表示が省略できる場合でも、公益目的事業財産や指定純資産、使途拘束資産などについては、法人内部で適切に管理できる体制が引き続き求められます。
「区分経理をなくす」のではなく、「必要な管理を適切な方法で行う」という考え方への整理といえるでしょう。
③ 寄附財産の使途指定が柔軟に
寄附金を受け入れる際には、寄附者が使途を指定することがあります。
従来は「具体的な使途」が求められるため、「○○事業だけに使用する」といった限定的な指定が多く見られました。
今回の改訂では、寄附の使途には一定の具体性が必要であるものの、一定の幅を持った指定も認められることが明確になりました。
例えば、
「寄附金の○割以下は法人運営費に充てる」といった指定方法も可能であることが示されています。
これは、寄附者の意思を尊重しながらも、法人がより柔軟に資金を活用できるようにするための実務的な見直しです。基金運営や継続的な寄附募集を行う公益法人にとっては、実務上のメリットが大きい改訂といえるでしょう。
④ 事業計画書・収支予算書は「経営ツール」へ
今回の改訂では、事業計画書と収支予算書の位置付けについても考え方が整理されました。
これまで事業計画書は、「来年度に何を実施するか」を記載する資料という位置付けが中心でした。しかし今回のガイドラインで、
事業計画書には、
中長期的な事業方針
公益目的事業の質の向上
ガバナンス
透明性向上
KPI
インパクト測定・マネジメント
などについても記載することが望ましいとされています。
また、収支予算書についても、単なる予算書ではなく、理事会が予算と実績を比較・分析し、法人経営に活用するための資料として位置付けられました。
また、活動計算書の注記で開示される会計区分別・事業区分別・費用の形態別区分についても、収支予算書で示すことが望ましいとされています。
公益法人においても、「予算を作る」ことが目的ではなく、「予算を経営に活かす」ことが求められる時代になってきたことを感じます。
まとめ
今回のガイドライン改訂を通じて感じるのは、公益法人に求められるものが、「適正な会計処理」から「公益法人経営」へと広がっているということです。
令和6年会計基準への対応はもちろん重要ですが、その先には、財産を適切に管理し説明責任を果たすこと、寄附財産を効果的に活用すること、そして中長期的な視点で公益目的事業を運営することが、これまで以上に求められています。
今後、公益法人には「会計基準への対応」だけでなく、「経営の質」を高める取り組みがますます重要になるでしょう。今回のガイドライン改訂は、その方向性を示すメッセージとして受け止めることができます。
<参考資料>改定案の概要
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000314464







