すでに始まっています『電子申請の義務化』(社会保険手続き編)
社会保険手続きの一部が2020年4月1日より電子申請義務化となり、早1年以上が経とうとしています。
このたびの電子申請義務化は対象事業者の範囲が限られていて、対象事業者の条件は「資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的会社に係る適用事業所」となるため、対象事業者ではない多くの中小企業では社会保険手続きをまだ窓口で行っている場合が多いと聞きます。
そしてもうすでに完全に電子申請に切り替えたという事業者はまだ少ないと言えるかもしれません。
しかし、近い将来、電子申請の対象範囲が中小企業へと拡大されることが予想されるため、いつ義務化の対象になっても良い様に、今のうちから電子申請を行える準備をしておくことが求められるかと思います。
それでは社会保険の手続きを電子申請へ切り替えるためには、どの様な準備が必要か確認してみましょう。
電子申請に必要な準備
(1)電子証明書またはGビズIDの取得
電子申請をするには、電子証明書またはGビズIDの取得が必須です。
●電子証明書はどれが良い?
電子証明書とは、本人認識や改ざん防止のために用いられる証明書です。つまり紙の申請書でいうところの「印鑑」の代わりです。電子申請だと別の事業者が嘘をついて送信するといったことも可能ため、通常は電子証明書と申請内容を必ずセットで送信することが必要になります。
その電子証明書の取得には様々な認証局があり、どれが良いとは言い切れませんが、一番よく知られているのが、法務省の電子証明書です。2年で10,000円を切る手数料でかつ信頼性があります。
日本国内では一番多く企業向けで使われているため、どれが良いかわからない場合はこちらを手配するとよいかと思います。
●GビズIDの取得はどこから?
GビズIDとは行政側が用意する本人確認可能な、企業向けの共通IDです。
GビスIDの申込はホームページから行います。GビスIDは「プライム」「メンバー」「エントリー」の3種類あり、多くの手続きに使える「プライム」を申込しておくとよいと思います。
ただし、GビズIDプライムの申込には、スマートフォンでの認証や、紙の申請書郵送などがあり、3週間程度の時間がかかる場合もあるため、余裕をもって申込をしておきましょう。
(2)電子申請可能な給与計算ソフトまたは社会保険手続きサービスを調べる
●給与ソフトからダイレクトに送信する
昔から政府の電子申請窓口としてg-Govというサイトがありました。しかしこちらは毎回社員情報を入力する必要があるなど、使い勝手が良いものではありませんでした。しかし今はAPI連携により、給与ソフトからダイレクトに電子申請データを送れるようになりました。よって社員情報を毎回入力して手続きをするといった手間が省けるようになっています。その一方でまだ対応している手続きの数が少ないのも事実です。必要な手続きが電子申請に対応しているか、必ず確認しましょう。
●給与ソフトと社会保険手続きのソフトを連携させ、社会保険手続きのソフトから送信する
下記の社会保険手続きソフトを導入し、電子申請を行う方法です。社員情報などすでにある情報を使って送信できるため、手間がかからない。多くの手続きを電子申請できる。といったメリットを受けることができます。
その一方で新たなソフト導入が必要なため、コスト面で少し不利かもしれません。
●給与ソフトから電子申請用のデータを作成し、マイナポータルを通じて送信する
この場合、GビズIDと日本年金機構のホームページから無料でダウンロードできる「届書作成プログラム」の準備が必要になります。
コスト面では一番メリットがありますが、手順が複雑なため、もしかするとあまり効率良く手続きを行うことに向いていないかもしれません。
(3)電子申請対象の範囲を知る
以下の手続きが義務化の対象です
●日本年金機構管轄(健康保険・厚生年金保険関係手続)
・被保険者報酬月額算定基礎届・70 歳以上被用者算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届・70 歳以上被用者月額変更届
・被保険者賞与支払届・70 歳以上被用者賞与支払届
●ハローワーク管轄(雇用保険被保険者関係手続)
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届(雇用保険被保険者離職証明書を含みます)
・雇用保険被保険者転勤届
・高年齢雇用継続給付受給資格確認・支給申請(除:高年齢再就職給付 金)(雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書を含みます)
・育児休業給付受給資格確認・支給申請(雇用保険被保険者休業開始時賃 金月額証明書を含みます)
●労働基準監督署管轄(労働保険関係手続) 継続事業(一括有期事業を含む)
・年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般 拠出金申告書)
・増加概算保険料申告書
これらの手続きが電子申請の対象ですが、まだ対象事業者になっていない場合は、対応できる範囲から電子申請を始めてみるのも良いかもしれません。
例えば、月額変更届、算定基礎届、賞与支払届といった給与ソフトから簡単にダイレクト送信できるような手続きから始めるといったように。
手続きの電子化をお考えの企業担当者は下記窓口までご相談ください。
数多くの選択肢があり、どの方法が一番良いか分からない場合もあるため、業務内容をお聞きしながら最適な電子申請への移行をアドバイスさせて頂きます。