令和2年 年末調整5つの改正ポイント
■年末調整の控除計算のしくみ
令和2年の年末調整分から、控除計算の方法が大幅に変わります。
通常、年末調整の所得税計算では、収入金額そのままが所得税額計算の対象になるのではなく、各種控除金額を差し引きした額で、所得税額が算出されます。
給与所得の収入金額から、「基礎控除額」「給与所得の控除額」「配偶者控除額」「保険料控除額」等の14種の控除額を差し引きし、そこから所得税額を算出します。さらに「住宅借入金等特別控除額」を直接差し引きし、年間の所得税額が決定します。
つまり今回の改正により、昨年と同収入・同条件であっても、算出所得税が異なる可能性があるということです。それではその改正の中身について確認してみましょう。
①基礎控除額が一律10万円引き上げされました
ただし、納税者本人の合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下の場合には32万円、2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円、2,500万円を超えると基礎控除は適用されなくなります。
つまり高収入の方にとって不利な税制改正となります。
②給与所得控除額が一律10万円引き下げになりました
(※給与等の収入金額は850万円以下の方が対象)
(※給与等の収入金額は850万円超の方の控除額は、220万円から195万円に引き下げ)
下記の表から控除額を計算出来ます。事前に850万円超の方が在席しているか確認しましょう。
配偶者控除の場合、配偶者の給与等の収入金額103万円-所得控除55万円=所得48万円となってしまうため、一見すると配偶者控除を受けられなくなり、配偶者特別控除に該当するように思われますが、基礎控除が48万円に引き上げられたことより、改正後は配偶者の所得48万円まで認められるようになっていますので、ご安心を。
③所得金額調整控除が新たに創設されました
給与所得だけの人に適用される所得金額調整控除の適用要件は次の通りです。
1.その年の給与収入が850万円超の方であること
かつ、
2.次のいずれかに該当すること
(1)23歳未満の扶養親族を有すること
(2)本人が特別障害者であること
(3)特別障害者(※1)である同一生計配偶者または扶養親族を有すること
この制度は、特別障害者への税制優遇だけではなく、子育てを支援する目的等から23歳未満の扶養親族がいれば所得金額調整控除を受けることができます。
これまで「控除対象扶養親族」というと16歳以上の親族でしたが、新たに創設される所得金額調整控除においては0歳から22歳までの23歳未満の扶養親族であればその対象となります。
④配偶者等の合計所得金額要件が変更になりました
今回の改正は、給与所得控除や基礎控除の改正で、配偶者控除などに影響させる趣旨の改正ではないため、配偶者控除などに影響がでないよう配偶者控除などの合計所得金額の金額要件の改正が行われました。それぞれ、10万円ずつアップしています。
ただし、事業所得等で合計所得金額が38万円以下であることにより控除対象配偶者の要件を満たていたような方は、合計所得金額(配偶者控除であれば38万円⇒48万円)が改正されたことにより、少しお得になりました。(給与所得者以外の方は、給与所得控除が▲10万円になった影響はないため)
⑤従業員配布用の年末調整時の申告書が変更になりました
令和2年分以後の「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告」及び「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となります。
変更後の書式は国税庁のHPに公開されています。
※国税庁HPより
令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
いかがでしたでしょうか。5つの改正ポイントに絞って詳細をお伝えしました。
年末調整の計算方法が変更になることにより、給与計算システムを大幅に改修したり、年末調整前に従業員へ配布する申告書類の新たな説明をするための説明文書を作成するなど、給与担当者にとってご負担が増える一方です。
しかし、こういったタイミングで社内の業務を見直しして、申告書の提出を電子化するなど業務を減らすことも可能です。電子化や令和2年の年末調整等に対応済み給与計算ソフトについてのご相談がありましたら当社までお問合せください。