
【年末調整】年金受給者の年末調整処理について
超高齢化社会に突入し、企業の定年退職年齢も65歳に引き上げられつつあります。
(※最近では、70歳定年の企業もあります。)
もし今の職場に、65歳以上で既に公的年金をもらいつつ、元気に働いていて、給料収入のある
従業員がいた場合、給与所得の年末調整は一体どのようになるのでしょうか。
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本人の合計所得金額には公的年金受給額を含める
配偶者控除または、配偶者特別控除を受けるためには「配偶者控除等申告書」内に「本人の合計
所得金額(見積額)」と「配偶者の合計所得金額(見積額)」の記載が必要です。通常は「本人・配偶者の合計所得金額(見積額)」が、給与や賞与のみのため、会社が支給した給与等の収入金額から下の表を使い、所得金額を計算します。
【給与所得の計算方法】
給与の収入金額 A | 給与所得の金額 | ||
1円以上 650,999円以下 | 0円 | ||
651,000円以上 1,899,999円以下 | A− 650,000 円 | ||
1,900,000円以上 3,599,999円以下 | A÷ 4(千円未満切捨て)=B ⇒ B× 2.8 - 80,000 円 | ||
3,600,000円以上 6,599,999円以下 | A÷ 4(千円未満切捨て)=B ⇒ B × 3.2 - 440,000 円 | ||
6,600,000円以上 8,499,999円以下 | A × 90% − 1,100,000 円 | ||
8,500,000円以上 | A − 1,950,000 円 | ||
参考:国税庁HP「合計所得金額の計算について(令和7年分)」
所得金額調整控除または 特定支出控除を適用する場合は、計算した給与所得金額から、それぞれの控除額を差し引きます。
所得金額調整控除があるときは、以下の①又は②の計算結果(①②両方に該当する場合は、それらの合計額)を控除額とします。
①(給与の収入金額〔上限1,000万円〕- 850万円)× 10%
②(給与所得控除後の給与等の金額〔上限10万円〕
+ 公的年金等に係る雑所得の金額〔上限10万円〕- 10万円)
一方、公的年金を受給しながら、会社の給与や賞与の支給もある従業員の合計所得を決定する
には、給与所得以外の記載が必要となり「公的年金」の収入は「雑所得」に該当します。
雑所得は、次の2つを合計した金額で決まります。
● 公的年金等に係る雑所得
→収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
● 公的年金等以外の雑所得
→総収入金額から必要経費を控除した金額
公的年金等の収入額に対する公的年金等控除額の計算方法は以下のとおりです。
①65歳以上の方の公的年金等控除額
公的年金等の収入金額 A | 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額 | ||
1,000 万円以下 | 1,000 万円超 | 2,000 万円超 | |
330万円以下 | 110万円 | 100万円 | 90万円 |
330万円超 410万円以下 | A×25%+27万5,000円 | A×25%+17万5,000円 | A×25%+7万5,000円 |
410万円超 770万円以下 | A×15%+68万5,000円 | A×15%+58万5,000円 | A×15%+48万5,000円 |
770万円超 1,000万円以下 | A×5%+145万5,000円 | A×5%+135万5,000円 | A×5%+125万5,000円 |
1,000万円超 | 195万5,000円 | 185万5,000円 | 175万5,000円 |
参考:国税庁HP「合計所得金額の計算について(令和7年分)」
②65歳未満の方の公的年金等控除額
公的年金等の収入金額 A | 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額 | ||
1,000 万円以下 | 1,000 万円超 | 2,000 万円超 | |
130万円以下 | 60万円 | 50万円 | 40万円 |
130万円超 410万円以下 | A×25%+27万5,000円 | A×25%+17万5,000円 | A×25%+7万5,000円 |
410万円超 770万円以下 | A×15%+68万5,000円 | A×15%+58万5,000円 | A×15%+48万5,000円 |
770万円超 1,000万円以下 | A×5%+145万5,000円 | A×5%+135万5,000円 | A×5%+125万5,000円 |
1,000万円超 | 195万5,000円 | 185万5,000円 | 175万5,000円 |
参考:国税庁HP「合計所得金額の計算について(令和7年分)」
これらの所得金額から、本人の合計所得金額(見積額)が決定し、配偶者の合計所得金額と照らし合わせて、配偶者控除または、配偶者特別控除の金額が決定します。
年末調整できるのは、あくまで給与等の支給額のみ
年末調整で年間の所得額を算出し、徴収・還付を行う範囲は、あくまで給与等の収入に限られており、それ以外の収入がある場合、本人による確定申告が必要になります。年金を受給しながら働く従業員は、会社の年末調整計算で終わりでなはく、その後、確定申告をする必要があります。その理由としては、年金による収入は「給与所得」ではなく、「雑所得」に区分されるため、年末調整の対象外項目だからです。
確定申告不要制度
年金受給者である従業員が、確定申告を行わなくてよい制度があります。
これを「確定申告不要制度」といい、一定の要件を満たせば毎年の申告手続きが免除されるという内容となっています。
納税者の負担を軽減するためにつくられた制度です。
以下の条件を満たす場合、納税額がある場合でも所得税等の確定申告は必要ありません。
✔ 公的年金等(※₁)の収入金額の合計額が400万円以下で、受け取っている年金が
すべて源泉徴収の対象となる場合
✔ 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※₂)が20万円以下である場合

参考:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
ただし、確定申告不要制度を利用することを選択した場合でも、住民税の申告は必要なため、居住する市町村に問い合わせて確認しましょう。
数年おきに制度が変わるため、年末調整計算も年々複雑になり、給与計算担当の立場の方は、毎年この時期は、神経を使いますね。
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