医療2024年問題 ー医師の働き方改革ー
長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現などを目指し、2019年度から働き方改革関連法が順次施行され、医療機関で働く人を含むほぼ全ての業種を対象に、原則月45時間・年360時間(特別条項付きの36協定締結で複数月平均80時間・年720時間)を限度とした時間外労働の上限規制が導入されました。
しかし、長時間勤務が常態化している業界については、この働き方改革関連法の適用が猶予され、医師もその一つとして指定されました。
目次[非表示]
- 1.医療業界の2024問題とは?
- 1.1.医師の働き方改革全体像
- 1.2.A・B・C水準とは
- 1.3.B・C水準の適用を受けるための必要な対応
- 2.医療業界が抱えている課題
- 2.1.働く医師の勤務実態を正確に把握できない
- 2.2.医師偏在の問題
- 3.講じるべき対策
- 3.1.まずは労働時間の正確な把握から
- 3.2.医療に特化した勤怠管理
- 4.まとめ
医療業界の2024問題とは?
2024年問題とは、働き方改革関連法により、時間外労働時間の上限規制が2024年4月から適用されることによって生じるさまざまな問題のことです。
具体的な上限はこちらです。(イメージ図)
この上限規制内に収まるよう働く必要があります。対応への道筋を体制どうなっていくのか、全体像からみていきます。
医師の働き方改革全体像
厚生労働省の2019年の勤務実態調査で、休日含めた時間外労働が年間960時間を超えた勤務医は37.8%でした。そのうち上位10%は年1,860時間超の医師が存在していたことがわかりました。つまり、全体の5割弱の医師は、2024年4月に始まる上限規制に対応する必要があります。
医師の働き方改革は、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年5月28日公布)が根拠法となり進められています。
これは、「医師の働き方改革」のみではなく、「医療提供体制」全体に関わる取り組みとして扱われていることが伺えます。
イメージ)
参考:中央社会保険医療協議会が掲げる、医師の働き方改革の全体像 より
全体像から読み取れることは「医療機関単体の取り組みならず、全体の取り組みとして進められている」ということです。
さらに「残業時間規制の問題」への取り組み指標として、2024年4月以降、A・B・C水準という分類がすべての医療機関を対象に設定され、この分類に応じた残業規制とそれに伴う健康確保措置が求められます。
A・B・C水準とは
厚生労働省の2019年の勤務実態調査で年1,860時間超の医師が全体の10%程度で存在していたことを踏まえ、一定の要件を満たした医療機関においては暫定的に年1,860時間まで時間外労働を認め、2036年3月(2035年度末)までに段階的に暫定特例水準を解消していくとしています。
この段階がA・B・Cの3段階として設けられました。
- A水準(年960時間以下)
- B水準(地域医療確保暫定特例水準:年1,860時間以下、後述の連携Bの場合は、個々の医療機関において年960時間以下)
- C水準(集中的技能向上水準:年1,860時間以下)
参照元:厚生労働省「医師の働き方改革について」
ここでのポイントは、B水準、C水準の適用をうけるには、これらの水準に該当する医師がいる医療機関は、2023年度末までに都道府県から指定を受ける必要がある点です。
B・C水準の適用を受けるための必要な対応
都道府県からB水準、C水準の指定を受けるためには、計画について医療機関勤務環境評価センター(※)による第三者評価が必要になります。
評価センターによる評価や指定が間に合わなければ、B水準の医師がいるにもかかわらず、2024年度はA水準(年960時間)を順守せざるを得なくなるという状況もあり得ます。
2035年末までの暫定的な措置とはいえ、B水準とC水準の上限である年1,860時間は、一般則(原則)である年360時間の5倍、特別条項付きの年720時間でも2.5倍に相当します。
そのため、月の上限である100時間を超える場合は、追加的健康確保措置を義務として
- 産業医等による面接指導と就業上の措置(就業中止など)
- 連続勤務時間制限28時間や勤務間インターバル9時間の確保
などの措置にも対応が必要です。
※医療機関勤務環境評価センターとは、労働時間短縮のための取り組みの状況などについて評価・助言・指導を行う機関です。またこの結果を病院管理者と都道府県知事に通知し、都道府県知事は結果を公表するという流れになっています。
医療業界が抱えている課題
働く医師の勤務実態を正確に把握できない
医師や看護師など、さまざまな職種の職員が24時間体制で働いている病院では、
- 夜勤や宿日直を含む3交代制
- 変形労働時間制
- 複数の医院、拠点での勤務
- 緊急対応など急な予定変更
など勤務形態が多岐にわたります。そのため勤怠管理が難しく、いまだに紙による出退勤管理や手作業で集計を行っているところも少なくありません。
医師偏在の問題
日本の医療の質を支えてきたのは、長時間労働を厭わない医師の献身的な働き方があったからともいえます。医師が不足する中で、地域によっても格差が生じており、同じ都道府県内でも、県庁所在地などの都市圏に医師が集中し、過疎地域で不足する傾向もみられます。ただでさえ医師が不足している地方では、この上限では医療体制を維持できなくなる危険性があります。
地域医療に従事する医師や研修中の医師などは長時間労働が当面の間避けられない場合もあるとしてB・C水準が設けられていますが、2036年3月(2035年度末)までに段階的に暫定特例水準を解消していくとしています。
講じるべき対策
まずは労働時間の正確な把握から
こうした数々の対策や暫定特例水準の手続きを進める上で最も重要であり、また“前提条件”となるのは、各病院で働く医師の勤務実態を正確に把握することです。それぞれの医師の労働時間がどれくらいなのかが分からなければ、方針も対策も立てようがないからです。
働き方改革では「どの水準になるのか」が注目されがちですが、「時間外労働の上限規制」以外については、医師も他職種と同様の働き方改革が既に適用されています。具体的には、
- すべての人(管理監督者含む)の労働時間を客観的に把握すること
- 年次有給休暇を最低5日は確保すること
- 同一労働・同一賃金の原則
- 時間外・深夜労働について、1ヶ月60時間を超える場合は50%以上の割増賃金率とすること
これらについては、医師でも遵守する必要性があります。
なお働き方改革以前の問題として、労働基準法・労働安全衛生法において明記されている
- 労使での適切な36協定の締結
- 勤務人数に合わせた適切な労働衛生体制の整備(衛生委員会・産業医の選任など)
が、これまで医療機関、特に医師においては曖昧で遵守されていないことが多い点がありましたが、今回の働き方改革でB・C水準の指定要件に含まれたため、今後より厳しくチェックされることが予想されます。
医療に特化した勤怠管理
政府が推し進める2024年の「医師の働き方改革」により、正しい勤怠データに基づいた医師の労働時間管理がますます重要になってきます。では病院に適した勤怠管理システムを選ぶポイントはどういったものでしょうか。大きくは3つ。
- 忙しくても打刻しやすいこと
タイムカード、PC、スマホ、ビーコンなどで出退勤の打刻を行い、「客観的」な時刻記録ができること。勤怠管理システムを使って打刻することで勤怠状況をリアルタイムに見える化でき、部署ごとや週単位・月単位ごとに時間外労働時間を集計して超過労働をチェックしたり、複数拠点の勤務状況を一括して確認の手間を省いたりすることができます。
- 複雑な勤務パターン、勤務シフト表の作成が簡単にできる
スタッフからの希望シフトがリアルタイムに自動反映され、急なシフト変更や人員の過不足の確認が容易になるほか、夜勤・宿直など法令に対応したものであることも重要です。
- 導入時のサポート体制があること
一般企業とは違い、IT関連の技術者が常駐している病院はほとんどないのではないでしょうか。そのため勤怠管理システムに問題やトラブルが発生した場合に備え、迅速にサポートを受けられる製品を選択できると安心です。また、導入時は複数あるシフトパターンや病院独自のルールなど、複雑な初期設定が必要になるため、サポート体制がしっかりしているシステム提供会社を選ぶことをおすすめします。
まとめ
長時間労働の勤務医がいる医療機関では、“待ったなし”で時短計画などを作成し、それをもとに医師の時間外労働の改善に取り組んでいかなければなりません。
「医師の働き方改革」への対応の第一歩は、勤怠時間の”把握”からです。2024年4月以降、A・B・C水準という分類がすべての医療機関を対象に設定され、この分類に応じた残業規制とそれに伴う健康確保措置が求められます。客観的事実の把握をしないと、エビデンス報告できない事態になってしまいます。
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