電子帳簿保存法とインボイス制度の2大法改正 経理業務はどう変わるのか?
2022年1月1日から改正電子帳簿保存法が施行され、2023年10月1日からインボイス制度が開始されます。これらの法改正により経理業務が大きく変わろうとしています。
この2つの法改正の共通項として請求書業務にどのような影響を与えるのかを解説していきます。経理担当者の負担軽減を実現するためにはしっかりと理解を深めていく必要があります。ぜひご参考ください。
※本記事は、2022年12月時点の情報をもとに作成しています。
インボイス制度 実務対策ガイドブック
目次[非表示]
- 1.電子帳簿保存法とインボイス制度との違い3つ
- 2.電子帳簿保存法改正が経理に与える影響
- 2.1.電子取引をした請求書の紙保存ができなくなる
- 2.2.電子データの保存要件が緩和される
- 2.3.保存方法の違いに注意
- 3.インボイス制度導入が経理に与える影響
- 3.1.請求書の様式が変更される
- 3.2.仕訳の変更点 ‐消費税申告時の税区分‐
- 4.まとめ
電子帳簿保存法とインボイス制度との違い3つ
まずは、電子帳簿保存法とインボイス制度について、この3つ違いがありますので整理します。
- 対象の税金の種類
- 変更になる対象
- 対応する義務
税金の種類
1つ目は、「電子帳簿保存法」は所得税や法人税などの国税全般に関するルールとなり、「インボイス制度」は消費税に関する新しい制度、どちらも税金に関する仕組みですが、まったくの別物です。
変更になる対象
2つ目は、「電子帳簿保存法」は請求書や領収書の保存方法が変わり、「インボイス制度」は請求書や領収書の様式が変わります。
対応する義務
3つ目は、対応義務について「電子帳簿保存法」は義務ですが、「インボイス制度」は任意となっています。
経理業務にとくに関わるのが、2つ目「変更になる対象」 の、下図の赤枠部分です。
2つの制度の概要を見たところで、実際に経理担当者が請求書業務を行う際、どのような影響があるのかについてみていきます。
電子帳簿保存法改正が経理に与える影響
電子帳簿保存法は1998年に施行された法律で、これまでに何度も改正され、現在に至っています。インターネットの普及やIT技術の進化により、電子データでの保存を一般化させ、業務効率化を図る目的で導入された経緯があります。
すでに2022年1月から施行されている改正電子帳簿保存法。経理業務に大きくかかわるのは、大きく2つあります。「電子取引をした請求書の紙保存ができなくなる」と「電子データの保存要件が緩和される」の2つです。
電子取引をした請求書の紙保存ができなくなる
今回の改正で電子取引データを紙で印刷、保存する措置が廃止されています。そのため、請求書を含め電子データで受領した場合は、電子帳簿保存法に則り、電子保存をしなくてはなりません。
例外的に2023年12月31日までの期間、所轄税務署長が「止むを得ない」と判断した場合に限り、紙に印刷して保存することを認める宥恕措置が設けられています。
電子データの保存要件が緩和される
従来、電子取引は承認制度でしたが、廃止されたためすぐに電子化の準備を進められるようになります。スキャナ保存した電子データは、クラウドサーバー上での保存が可能になります。
保存方法の違いに注意
電子帳簿保存法とインボイス制度への対応を行う際、注意しなければならないのが「書類の保存方法の違い」です。
前述の通り、改正電子帳簿保存法では、電子取引によって発生した請求書・領収書などは「電子データとして保存」することが義務づけられています。一方で、インボイス制度を定めた消費税法では、電子データとして受領した請求書・領収書などを「紙文書として保存」することが認められています。
2つの制度の保存方法の違いはこちら。
図の通り、インボイス制度では、電子帳簿保存法の要件を満たせば国税関係書類を電子データとして保存できると定められています。この違いを把握した上で、業務フローや保存ルールの統一を図るのが良いと言えるでしょう。
インボイス制度導入が経理に与える影響
軽減税率の導入で消費税率は8%と10%が混在することになりました。それによって消費税を把握するのが難しくなったといえます。そこで売手が買手に対し正確な消費税率、消費税額を伝えるために2023年10月1日から導入されるのがインボイス制度です。
インボイス制度の開始は、経理担当者の負担を増やしてしまう可能性が高いといえます。その主な理由は、おおきく2つです。
請求書の様式が変更される
記載項目に「登録番号」と「適用税率および消費税額等の記載」2項目が追加されます。決められたフォーマットがあるわけではないため、書式は自由ですが、確認項目が増えるだけでも大きな負担と言えます。
仕訳の変更点 ‐消費税申告時の税区分‐
従来は、消費税申告時に「課税仕入10%」「課税仕入8%」の税区分を持つ仕訳を集計して仕入税額としてよかったのですが、インボイス制度施行後は、「仕入税額対象の課税仕入10%」「仕入税額対象の課税仕入8%」という新たな税区分の概念が産まれます。
そのため、仕訳データのうち、勘定科目に紐づく「税区分」について、インボイスに対応した取引の場合は仕入税額対象、免税事業者との取引の場合は仕入税額の対象外と、仕入税額控除対象かどうか分かるようにしておく必要があります。
また、経過措置として、免税事業者等の仕⼊に関しては、2029年9⽉30⽇まで段階的に仕⼊税額相当額の⼀定割合を仕⼊税額として控除できます。
(税区分のイメージ)
このような仕訳時の税区分についても、確認しなければならない業務負担が増えると予想されますので、注意が必要です。
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まとめ
インボイス制度と改正電帳法の対応で社内で混乱しないように、この2つの対応はひとつのプロジェクトとして実施するのが望ましいと言えます。
本記事では、電子帳簿保存法やインボイス制度への経理業務への影響を解説しましたが、長期的視点から計画的に取り組んでいく必要があるでしょう。
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