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給与デジタル払いのメリットやデメリット、導入手順をわかりやすく解説

2023年4月に解禁された給与デジタル払い。「キャッシュレス決済」の普及とともに、従来の銀行振込に代わって、給与を電子マネー(デジタルマネー)で受け取れる画期的な制度です。しかし、メリットだけでなく、注意点も存在します。

この記事では、現在、国が導入に向けて動いている「給与のデジタル払い」について、導入前に知っておくべきポイントを解説します。企業担当者の方はもちろん、従業員の方も参考になるよう解説致します。


目次[非表示]

  1. 1.給与デジタル払いとは?
    1. 1.1.銀行振込とデジタル給与の違い
    2. 1.2.資金移動業者が破綻した場合
  2. 2.給与デジタル払いのメリット・デメリット
    1. 2.1.企業(支払側)のメリット
    2. 2.2.従業員(受取側)のメリット
    3. 2.3.企業(支払側)の デメリット
    4. 2.4.従業員(受取側)のデメリット
  3. 3.給与デジタル払いの導入手順
    1. 3.1.資金移動業者を選定する
    2. 3.2.労使協定の締結
    3. 3.3.就業規則の改定・運用ルールを定める
    4. 3.4.従業員への周知と説明をする
    5. 3.5.希望者の同意を得る
  4. 4.まとめ


給与デジタル払いとは?

給与デジタル払いとは、給与を銀行口座ではなく、電子マネーで受け取る制度です。厚生労働省が推進しており、2023年4月に解禁されました。

デジタル給与の受け取りができるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(※)の口座に限られます。2024年5月現在、厚生労働省によると、いまだ指定申請を行った資金移動事業者4社の審査中であるとしており、指定資金移動事業者の決定は見通しが立っていない状況です。

企業が給与デジタル払いを利用できるようになるのはもう少し先になると考えられています。

※資金移動業者とは、銀行以外の新しい送金サービス提供者です。「○○ペイ」などと呼ばれるものが代表的です。


(イメージ図:従来の支払い方法と給与デジタル払い)




銀行振込とデジタル給与の違い

銀行振込とデジタル給与の主な違いを分かりやすく比較表にしてにまとめました。


銀行振込

デジタル給与

1.送金方法

銀行の振込システム

資金移動業者のシステム

2.受け取り方法

銀行口座

電子マネー(デジタルマネー)

3.振込手数料

やや高めで

銀行や振込方法によって異なる

多くの場合、銀行振込より

低く設定される

4.利便性

銀行口座が必要  

銀行口座がなくても利用可能

5.従業員の同意

不要

必要

銀行振り込みとデジタル給与(給与デジタル払い)の主な違いとして、「3.振込手数料」が比較的安価になる可能性、「4.利便性」の向上が挙げられます。


資金移動業者が破綻した場合

万が一、資金移動業者が破綻した場合、利用者にとって大きな不安になりますよね。厚生労働大臣指定の資金移動業者が破綻した場合、 デジタル給与受取のアカウント口座の残高は保証機関から速やかに弁済されることになっています。


給与デジタル払いのメリット・デメリット

企業(支払側)のメリット

まずは企業側からみたメリットからみていきます。

  1. 手数料の削減
    銀行振込にかかる手数料が不要になるため、企業にとってコスト削減につながります。

  2. 多様な人材の確保
    銀行口座を持たない外国人労働者など、これまで雇用が難しかった人材の採用が可能になります。
  3. 給与明細の電子化
    ペーパーレス化による業務効率化が期待できます。
  4. 企業イメージの向上
    先進的な取り組みとして、企業イメージが向上します。

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従業員(受取側)のメリット

次に従業員側からみたメリットをみていきます。大きく、この3つと考えられます。

  1. キャッシュレス決済の利便性
    日常的にキャッシュレス決済を利用している場合、手間となるのが「チャージ」操作です。従業員が利用中のキャッシュレス決済のアカウントに給与が送金されれば毎回チャージする手間がなくなり、現金を持ち歩く必要がなく、スムーズに決済できます。
  2. お金の管理のしやすさ
    電子マネーの利用履歴を簡単に確認できます。
  3. 給与の一部だけデジタル給与払いにすることもできる
    給与をデジタル払いにする場合は従業員の同意が必要ですが、その際にデジタル給与として受け取る範囲や金額は従業員自身が設定できます。


企業(支払側)の デメリット

デジタル給与(給与デジタル払い)の導入によるメリットは複数ありますが、同時にデメリットもあります。

企業側からみたデメリットをみていきます。

  1. 導入コスト
    システム導入や運用にかかるコストが発生します。
  2. 運用ルールの策定・管理
    給与の支払い方法や照合方法など、運用ルールを策定・管理する必要があります。
  3. 従業員の同意が必要
    導入には、従業員の同意が必要です。
  4. すべての電子マネーが対象ではない
    厚生労働省が認可した資金移動業者の口座のみが対象となります。

給与デジタル払いは、あくまで給与の支払手段における選択肢の1つであり、企業は従業員に対して強制はできません。そのため、従業員が給与デジタル払いを希望しない場合は、銀行振込などこれまで通りの方法で支払うことになります。

給与デジタル払いと銀行振込の従業員が両方いる場合には、それぞれ分けて処理する必要があり、業務量が増える可能性があります。


従業員(受取側)のデメリット

次に、従業員側からみたデメリットはこちらです。

  1. 不正利用のリスク
    電子マネーは、パスワードの漏洩や端末の紛失などによって、不正利用されるリスクがあります。万が一、不正利用された場合は、損害を被る可能性があります。
  2. 換金手数料
    電子マネーを現金に換金する場合、手数料が発生する場合があります。頻繁に換金する場合は、手数料が負担になる可能性があります。
  3. 口座入金額の上限が100万円
    資金移動業者の口座は預貯金口座ではないため、口座の上限額が100万円以下と定められています。上限を上回った場合は、あらかじめ指定した銀行口座に自動的に出金されます。その際、送金手数料がかかる場合があるため注意が必要です。


給与デジタル払いの導入手順

給与デジタル払いを導入するには、以下の手順が必要です。

資金移動業者を選定する

厚生労働大臣が指定する資金移動業者の中から、給与のデジタル払いに利用する事業者を選定します。自社で使用している給与計算システムなどと連携できる資金移動業者を選ぶと良いでしょう。

労使協定の締結

デジタル給与導入に当たっては、会社と従業員の間で「労使協定の締結」を行わなければなりません。 労使協定を締結する内容は、利用する資金移動業者デジタル給与の対象となる従業員の範囲や金額などを定める必要があります。

就業規則の改定・運用ルールを定める

給与の支払方法は、給与規定への明記が義務づけられている「絶対的記載事項」に該当しますので、デジタル給与を導入する場合は、賃金に関する就業規則の改定が必要です。

従業員への周知と説明をする

デジタル給与(給与デジタル払い)を運用開始する旨を従業員に周知します。告知内容としては、以下内容が想定されます。

  1. 利用可能な指定資金移動業者
  2. デジタル給与(給与デジタル払い)の受取範囲(金額など)の選択肢
  3. デジタル給与(給与デジタル払い)の受取を希望する場合
  4. 会社に届け出が必要となる事項(同意書、資金移動業者の口座IDなど)等

希望者の同意を得る

給与デジタル払いは、全従業員ではなく希望者にのみ必要な対応です。そのため、労使協定締の締結後、希望者に対して同意書を提出してもらいます。同意書に記載される主な項目はこちらです。

  1. デジタル給与で受け取る金額

  2. 資金移動業者の口座番号

  3. 開始希望日

  4. 上限金額を超えた場合の振込先口座などの記載

厚生労働省のWebサイトに同意書の例がありますので、ご参考ください。

出典:「資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書」


まとめ

以上を踏まえ、導入にあたっては、以下のポイントに留意すると良いでしょう。

  • 従業員のニーズを把握する
    従業員が希望する電子マネーに対応しているか確認する必要があります。
  • 運用ルールを明確にする
    給与の支払い方法や照合方法など、運用ルールを明確にしておく必要があります。
  • セキュリティ対策を徹底する
    不正利用を防ぐために、適切なセキュリティ対策を講じる準備必要があります。

給与デジタル払いは、導入状況はまだ発展途上ですが、今後普及が進む可能性が高い制度です。導入を検討している企業は、メリット・デメリットを理解し、従業員のニーズにも配慮した上で導入を進めることが大切です。

従業員の方は、給与デジタル払いのメリットとデメリットを理解し、自分に合った受け取り方法を選択しましょう。


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