労働保険の年度更新(毎年7月)の手続き方法と注意点を解説
労働保険料は、年1回 6月1日〜7月10日の間に概算で申告・納付を行い、翌年度の確定申告の際に差額を精算します。この前年度の保険料の精算と当年の概算納付の手続きを合わせて、年度更新と呼びます。
年度更新の際には、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を計算しなければなりません。 この記事では、労働保険料の計算方法や年度更新手続きの流れ、注意点などを解説します。
目次[非表示]
- 1.労働保険の年度更新とは
- 1.1.労働保険とは
- 1.2.労働保険の年度更新とは
- 2.労働保険の年度更新手続きの流れ
- 2.1.申告関係書類が届く
- 2.2.賃金集計表の作成
- 2.3.申告書へ記入する
- 2.4.申告書の提出・保険料の納付
- 3.年度更新の電子申請
- 4.労働保険の年度更新の注意点
- 4.1.賃金に含まれるもの・含まれないもの
- 4.2.事業所が複数あるケース
- 5.まとめ
労働保険の年度更新とは
労働保険とは
労働保険とは労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の総称です。常勤・パート・アルバイトなどの名称や雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇っている場合、労働保険への加入義務が生じます。
- 労災保険
労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や亡くなった場合に、被災労働者やご遺族を保護するための給付等を行うもの。 - 雇用保険
労働者が失業した場合や働き続けることが困難になった場合、また自ら教育訓練を受けた場合に、生活・雇用の安定と就職の促進を図るための給付等を行うもの。
労働保険の年度更新とは
労働保険の年度更新とは、年に一度、見込み給与を基に雇用保険料と労災保険料を算定し、過不足を調整した上で、次年度の保険料を会社が前払いすることです。この一連の手続きを年度更新と呼びます。
労働保険の保険期間は4月1日~翌年3月31日を単位として計算されることになっており、その額はすべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定することになっています。
申告期限や提出書類名の一覧表がこちらです。
項目 |
内容 |
申告期限 |
毎年6月1日〜7月10日 |
提出書類名 |
労働保険年度更新申告書 |
提出方法 |
窓口、郵送、電子申請による提出 |
提出先 |
労働局、労働基準監督署 |
保険年度ごとに、概算で保険料を納付し、年度末に賃金総額が確定したあとに精算する方法をとっています。この納付期間は毎年6月1日〜7月10日とされています。
労働保険の年度更新手続きの流れ
年度更新の手続きは、次のような手順で行います。
- 申告関係書類が事業所に届く
- 賃金集計表の作成をする
- 申告書へ記入する
- 申告書の提出・保険料の納付する
解説していきます。
申告関係書類が届く
年度更新に必要な書類は、毎年5月下旬頃、管轄の都道府県労働局から事業所宛に届きます。
- 労働保険 概算・増加概算・確定保険料 石綿健康被害救済法 一般拠出金申告書
- 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表
- 申告書の書き方
- 保険料率表
この書類のうち、申告書には労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等が印字されています。
賃金集計表の作成
この賃金集計表は、保険料計算の基礎となる賃金総額を集計するために使います。労災保険の対象労働者(全員)、雇用保険の対象労働者(雇用保険被保険者)について、対象労働者数と賃金総額を集計し、賃金集計表に記入します。
賃金集計表を作成する際には、厚生労働省から提供されている「年度更新申告書計算支援ツール」を活用すると便利です。Excelフォーマットに入力していくだけで自動計算され、申告書記入イメージも見ることができます。
(参考:確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表)
この賃金集計表は、保険料計算の基礎となる賃金総額を集計するために使います。申告書の基礎となるものですが、提出する必要はありませんので、事業所で保管しておくとよいでしょう。
申告書へ記入する
賃金集計表で計算した算定基礎額を、集計表の指示に従って申告書へ記入します。
申告書の上段に前年度の算定基礎額と確定保険料を、下段には今年度の見込額と概算保険料を記入し、「期別納付額」欄で結果を集計し、今期の労働保険料納付額を算出します。
(様式第6号 労働保険・一般拠出金 申告書(継続事業用)下書き用)
出典:厚生労働省 PDF「令和6年度 労働保険年度更新申告書(下書き用)」
申告書の提出・保険料の納付
申告書が完成したら、6月1日~7月10日の期限内に、申告・納付を行います。
なお保険料は一括納付が原則ですが、概算保険料が40万円以上の場合には3回の延納(分割納付)が可能です。
申告時に期別納付額の覧に記入する必要があります。期限は次の通りです。
- 1回目 … 7月10日
- 2回目 … 10月31日
- 3回目 … 1月31日
年度更新の電子申請
年度更新の手続きは、e-Govからの電子申請でも行えます。
電子申請のメリット
電子申請で手続きすれば、次のようなメリットがあります。
24時間いつでも手続きができる。
保険料の納付も電子納付により行うことができる。
会社で24時間いつでも手続きできるので、申請・納付先への移動時間の節約になります。
電子申請の流れ
電子申請の流れは、大まかには次のとおりです。
- e-Gov電子申請手続検索で「労働保険年度更新申告」を検索
- 申請書入力画面で必要事項を入力し、電子証明書を添付したデータをe-Govに保管
- 保管した申請データを送信
- e-Gov上で必要な情報を確認後、インターネットバンキングで保険料を電子納付
e-Govには多くの電子申請書類があり、申請書の入力画面に辿り着くまでに手間取る可能性があります。e-Govの外部連携APIに対応した市販の電子申請ソフトや労務管理システムを使って、電子申請を行うことも可能です。
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労働保険の年度更新の注意点
労働保険の年度更新に関する注意点を確認します。
賃金に含まれるもの・含まれないもの
労働保険料は賃金総額を基準にして計算します。賃金集計表を作成の際の賃金には、給与、手当、賞与など名称にかかわらず、労働に対して支払われるすべてのものが含まれます。賃金に含まれないものは、
- 役員報酬
- 傷病手当金
- 慶弔見舞金
- 解雇予告手当
などです。
なお、給与については支給日ではなく締日を基準にします。例えば、3月末締4月払いの給与は3月分、として計算する必要があります。
事業所が複数あるケース
労働保険は会社単位ではなく事業所単位で加入する必要があります。支店や店舗等、複数の事業所を有する会社はそれぞれの事業所ごとに年度更新を行わなければなりません。
ただし、同一の事業主かつ労災保険料率で定める事業の種類が同じ事業所の場合は、要件を満たすことでまとめて手続きすることが可能で、これを『継続事業の一括』と呼びます。一括で申告する際は、事前に継続事業の一括申請の手続きが必要です。
まとめ
労働保険の年度更新は、提出期限もあり、書類に不備があると再申告することにもなるため、労務関連の手続きの中でも大切な業務の1つです。
初めて年度更新をする事業場においてはもちろん、毎年年度更新を行っている会社でも、今一度、年度更新の手順について理解を深めておきましょう。
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