有給休暇とは?付与日数やタイミング、繰越の基本ルールを解説
有給休暇とは、従業員が取得できる休暇のうち、賃金が支払われる休暇を指します。単に「有給」「有休」と言ったり、「年次休暇」などと言ったりすることもあります。
本記事では、労働基準法に基づいた有給休暇の基礎知識や、有給休暇の付与日数、付与するタイミングである「基準日」、繰越のルール等についてわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.年次有給休暇とは
- 2.有給休暇の付与日数
- 2.1.年次有給休暇が発生する要件
- 2.2.年次有給休暇の付与日数
- 2.3.半日休暇
- 2.4.時間単位年休
- 3.有給休暇の付与基準日(タイミング)
- 3.1.雇入れから半年後の日
- 3.2.前倒しで有給休暇を付与した場合
- 3.3.有給休暇の基準日を揃えたい場合
- 4.有給休暇の繰越や有効期限
- 4.1.有給休暇の繰越とは
- 4.2. 有給休暇の繰越における最大保有日数
- 5.企業側の義務と対応
- 6.有給休暇の管理と記録
- 6.1. 年次有給休暇管理簿とは
- 6.2.勤怠管理システムの利用
- 7.最後に
年次有給休暇とは
有給休暇の基本概念
有給休暇の正式名称は、年次有給休暇です。1年ごとに決まった日数が付与されることから「年次有給休暇」という名称がつけられています。
労働基準法 第三十九条
② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり、使用者は労働者に年次有給休暇を付与しなければなりません。
有給休暇の重要性
年次有給休暇制度は、働く方の心身のリフレッシュをはかることを目的とし、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活のバランス)を実現するために存在している制度です。
労働基準法によって定められた制度ですから、どの企業でも要件を満たす労働者に対しては付与しなければいけません。働いていないのであれば、給与は発生しないという「ノーワーク・ノーペイの原則」がありますが、有給休暇については、この原則にはあてはまりません。
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有給休暇の付与日数
年次有給休暇が発生する要件
年次有給休暇が発生する要件について、以下の要件を満たした労働者であれば、年次有給休暇が使用可能となる仕組みです。
(年次有給休暇が発生する要件)
要件 |
備考 |
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年次有給休暇の付与日数
年次有給休暇の付与日数は労働基準法第39条で定められており、規定の条件を満たしているすべての労働者が有給休暇を取得することができます。
年次有給休暇の付与日数は勤続年数によって、以下のように定められています。
出典:厚生労働省|次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
継続勤務とは、労働者の入社日から起算した在籍期間を意味します。
半日休暇
半日休暇は、主に半日単位で付与できる休暇という意味合いで使用される休暇制度です。
労働者が希望し、企業側も同意した場合であれば、労使協定を結んでいなくても、日単位での取得の阻害とならない範囲で与えることができるものです。
年次有給休暇との違いは、法律で定められた休暇制度ではないという点で、対象となる労働者・付与日数などに法的規定や義務はありません。
時間単位年休
時間単位年休は、その名の通り時間単位で付与できる休暇制度で、半日休暇とは異なり、法律で定められた休暇制度です。
近年のワーク・ライフ・バランスや働き方改革の動向を背景に2010年4月に労働基準法が改正されて、一定の要件を満たした場合に時間単位での取得ができるようになりました(労働基準法 第三十九条4項)。
時間単位で付与できる要件はこちらの2つがあります。
- 就業規則で時間単位での付与について定めること
- 労使協定を締結すること
これらの要件を満たすことで、年5日の範囲内で時間単位での取得が可能です。
有給休暇の付与基準日(タイミング)
雇入れから半年後の日
原則として雇用された日から6ヵ月が経過した日を「基準日」として、毎年有給休暇が付与されます。
例えば、4月1日入社の従業員の基準日は、半年後の10月1日となり、毎年この日に有給休暇が新しく付与されます。
出典:厚生労働省PDF「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より
前倒しで有給休暇を付与した場合
初回の「有給休暇」付与のタイミングは、原則として雇い入れ日から6ヵ月ですが、法定の付与日より前倒しで付与することも可能です。
例えば、入社時に一括で付与することもできます。初めて付与した日を「基準日」とし、その後は、次の付与日までの勤続年数をカウントし、付与日数を決定します。そのため前倒しで付与する場合は、その後の勤続期間に応じた付与日数の調整が必要となります。
例えば、入社日(4/1)に前倒しで10日以上の年次有給休暇を付与した場合には、 その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。
出典:厚生労働省PDF「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より
有給休暇の基準日を揃えたい場合
人によって入社日は異なるため、付与日(基準日)は異なります。
例えば、法定通りのタイミングで有給休暇を付与すると、ばらばらの日に有給休暇を付与しなくてはならず、労務管理業務が煩雑になってしまいます。
ほかの労働者と入社月が異なる労働者が中途入社した際、付与日を揃えたい場合は、労働者にとって有利な条件であれば、基準日の統一が可能です。
例えば、中途入社した日が6月15日だった場合、通常通りの基準日だと、初回の有給が付与されるのは12月15日となります。この場合、2回目以降の付与日を4月1日にそろえることで管理を楽にするケースがあります。
ただし、就業規則などでルールを取り決めておく必要があり、また労働者に不利益にならないように注意する必要があります。
有給休暇の繰越や有効期限
有給休暇の繰越とは
有給休暇の繰越とは、従業員へ付与した有給休暇のうち1年以内に使い切れなかった分の日数を翌年へ繰り越せる仕組みのことです。
有給休暇を使いきらないうちに新たな有給休暇が付与された場合でも、付与日から2年間は、その有給休暇を利用することが可能です。
有給休暇の繰越における最大保有日数
2年連続20日有給休暇が付与された労働者が、有給休暇を1日も使わなかった場合、保有できる有給休暇の最大日数は40日になります。
ただし、事業者による年5日の時季指定義務に正しく対応している場合は、少なくとも年5日は消化されているはずなので、有給休暇の残日数が35日以上ある労働者がいる場合は有給休暇の取得履歴を確認の上、取得を促す必要があります。
企業側の義務と対応
有給休暇付与と取得義務の規定に違反した場合の罰則
労働基準法第39条には、有給休暇に関する規定が定められています。
規定に違反したときの罰則の内容は、年5日の有給休暇の取得をさせなかった場合、30万円以下の罰金が科せられ、そのほかの労働基準法第39条違反には、使用者に最大6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
適切な有給休暇の提供と経営のメリット
企業にとって、有給休暇の取得率を上げることはさまざまなメリットが得られます。
- 労働者の健康維持につながる
従業員エンゲージメント、企業イメージの向上
- 求職者へのアピールになる
「誰かが有給休暇を取得すると、途端に仕事が回らなくなる」という状況は、企業として望ましいものではありません。有休取得率の向上のために、労働者やチームごとの有給休暇の取得状況を把握し、適切な取得を促す必要があります。
有給休暇の管理と記録
企業は、労働者が、いつ、何日有給休暇を取得したかを記載した「有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存しなければなりません。
年次有給休暇管理簿とは
年次有給休暇管理簿は、労働者の年次有給休暇の取得状況を正確に把握するための書類のことです。
企業は、 年次有給休暇を10日以上付与される労働者を対象に、年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。作成方法は自由ですが、付与日・日数・取得時期の3項目は必ず記入する必要があります。
勤怠管理システムの利用
有給休暇を付与するタイミングは入社日によって異なるうえ、前倒し付与をおこなうと基準日がずれ、付与日数の計算や、きちんと有休を取得ができているかの管理が煩雑になります。また育児や介護といった理由で休業した場合の年次有給休暇の付与も管理が必要です。
これらを正しく管理するために、勤怠管理システムを導入することで、労働基準法に準拠した有休の付与・残日数の管理を自動化することができます。
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勤怠管理クラウドであれば、従業員はPCやスマートフォンから、いつでも有休取得申請を行え、上司も、いつでも、どこからでも、部下の勤務状況の閲覧や申請に対する承認作業を行うことが可能になります。
最後に
有給休暇の基礎知識や、有給休暇の付与日数、付与するタイミングである「基準日」、繰越のルールについ解説しました。 企業では、労働者の有給休暇の取得状況を把握し、適切な取得を促す必要があります。
勤怠管理システムを導入すれば、有給取得日数の集計から付与日数、消化日数が5日間に達しない社員の抽出など、集計作業を自動化することで確認が必要な場合に手動で集計する必要がなく、かんたんに情報を把握できます。
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