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裁量労働制とは?概要やメリット・デメリット、導入する際の注意点

労働基準法では、労働環境の健全性を確保するため、1日8時間・1週間40時間といった労働時間の上限が定められており、それ以上労働させる場合は時間外労働として残業代を支払う義務があります。

裁量労働制は、労働基準法38条に定められた「みなし労働時間制」のひとつで、社員が働いた時間ではなく働いた成果によって賃金を支払う制度のことです。この記事では、裁量労働制の概要やメリット・デメリット、導入する際の注意点などをわかりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.裁量労働制とは
    1. 1.1.裁量労働制の目的
    2. 1.2.裁量労働制はみなし労働時間制の一つ
    3. 1.3.裁量労働制は二種類にわかれている
  2. 2.裁量労働制の対象となる職種
    1. 2.1.企画業務型裁量労働制とは
    2. 2.2.専門業務型裁量労働制とは
  3. 3.裁量労働制のメリット・デメリット
    1. 3.1.メリット
    2. 3.2.デメリット
  4. 4.裁量労働制を導入する際の注意点
    1. 4.1.裁量労働制でも休日出勤や深夜労働の割増賃金が発生する
    2. 4.2.労働者の健康・福祉を確保するための措置が必要
    3. 4.3.変形労働時間制との違い
  5. 5.適切な勤怠時間の管理方法は
    1. 5.1.勤怠管理の重要性
  6. 6.まとめ

裁量労働制とは

日本企業の労働時間は「労働基準法」において「1日8時間、週40時間」と定められています。裁量労働制は、労働基準法38条に定められた「みなし労働時間制」のひとつで、社員が働いた時間ではなく働いた成果によって賃金を支払う制度のことです。

裁量労働制の目的

裁量労働制の主要な目的は、時間に固定されない働き方によって生産性を高めることです。

研究開発などの業務、あるいは事業の運営に関する企画立案など特定の業務について用いられることが多く、これら専門性の高い職種における業務では、決められた勤務時間の枠組みではかえって効率が悪くなるケースがあります。

そういったケースにおいて裁量労働制を導入すれば、始業時間や終業時間による労働時間の制限がなくなり、従業員個人の裁量で働く時間を管理できるようになります。

裁量労働制はみなし労働時間制の一つ

みなし労働時間制には、「裁量労働制」と「事業場外みなし労働時間制」の二など労働時間の把握が困難な場合に適用される制度です。

裁量労働制は二種類にわかれている

裁量労働制を適用できる職種は限定されており、基本的には企画職や研究・開発職としています。また、裁量労働制は業務の内容によって企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の2種類に分かれており、それぞれ要件が異なります。


(みなし労働時間制の種類)


裁量労働制の対象となる職種

裁量労働制は適用できる職種が決まっています。経営・企画管理などのホワイトカラーに適用できる裁量労働制は「企画業務型裁量労働制」といい、専門職に適用できる裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」と呼ばれ、 それぞれに運用ルールも定められています。


(対象業務例)

種類


対象職種

企画業務型裁量労働制      

  • 事業運営に関する企画・調査・分析の業務。
  • 労働者の裁量にゆだねる必要があると客観的に判断でき、広範な裁量が労働者に認められている業務。
専門業務型裁量労働制
  • 新商品・新技術・人文科学・自然科学に関する研究開発
  • 情報処理・設計業務
  • 取材・編集・番組制作・ディレクター/コピーライター業務
  • デザイン考案の業務
  • システムコンサルタント業務
  • 公認会計士業務・証券アナリスト業務・M&Aアドバイザー業務

  • 大学における教授研究の業務
  • 弁護士業務・建築士業務・中小企業診断士業務 など

順番にみていきます。

企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制は、特定の事業に対する企画・立案・調査・分析の業務を対象とし、対象となる業務が存在する事業場のみで導入可能です。

想定される職種には、経営部門の企画職・人事や財務の調査、分析部門・財務・広報などがあげられますが、企画業務型裁量労働制の導入要件として、以下4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること。
  2. 事業運営に関する企画・調査・分析の業務であること。
  3. 業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること。
  4. 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること。

さらに以下の項目について、労使委員会で定めた運営ルールを委員の5分の4以上の多数による決議が必要です。

【決議する必要がある項目】

  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象労働者の範囲
  3. 1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  4. 対象労働者に対する健康・福祉確保措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のための具体的措置内容
  6. 制度の適用にあたって労働者本人の同意を得なければならないこと
  7. 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしてはならないこと
  8. 制度の適用に関する同意の撤回の手続き
  9. 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  10. 労使委員会の決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  11. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること

専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制は、手段や時間配分など業務遂行のほとんどを従業員の裁量に委ねる専門的な業務に適用されます。

システムエンジニア・プログラマー・研究開発者・編集者・新聞記者・デザイナー・建築士・税理士などです。

導入の際は、次の事項を定めた労使協定を締結し、所轄労基署に届け出る必要があります。

【労使協定で定める項目】

  1. 制度の対象とする業務
  2. 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  3. 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が対象労働者に具体的な指示をしないこと
  4. 対象労働者に対する健康・福祉を確保するための措置
  5. 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  6. 制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
  7. 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  8. 制度の適用に関する同意の撤回の手続き
  9. 労使協定の有効期間
  10. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中およびその期間満了後5年間 (当面の間は3年間)保存すること

裁量労働制のメリット・デメリット

メリット

企業が裁量労働制を導入するメリットは2つ挙げられます。

  • 人件費の予測がしやすいこと
  • 残業管理の負担を減らせること

裁量労働制ではみなし労働時間を原則とするため、深夜や休日を除き、原則として時間外割増賃金が発生しません。 企業側にとっては、労務管理の負担を軽減する効果が大きいでしょう。

デメリット

企業が裁量労働制を導入するデメリットは2つ挙げられます。

  • 導入手続きや社内制度の整備が必要な点
  • 長時間労働を助長する恐れがある点

導入のために様々な手続きや調整が必要になります。また、きちんと勤怠管理をしないと労働の実態が把握しづらくなり、長時間労働の温床となる可能性があるため、対策が必要です。


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裁量労働制を導入する際の注意点

裁量労働制でも休日出勤や深夜労働の割増賃金が発生する

裁量労働制では、実際に働いた時間ではなく、労使間で定められたみなし労働時間を勤務時間としています。みなし労働時間が、1日8時間と決まっていれば3時間勤務であっても所定の給与が支払われ、8時間を超えて働いても原則として時間外割増賃金(残業代)は生じません。

しかし、法定休日に働く「休日出勤」や、午後10時~翌午前5時までの時間帯に「深夜労働」をおこなった場合、割増賃金の対象となります。

また、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合も時間外割増賃金が発生します。労働基準法第32条では「1日8時間、週40時間」を上限とした法定労働時間が定めていますので、みなし労働時間を9時間と定めた場合、法定労働時間を超えた1時間分には時間外割増賃金の対象となります。

裁量労働制であっても、従業員1人ひとりの労働時間を把握していなければ労働基準法に違反してしまうリスクがあります。


参照:厚生労働省 「裁量労働制の概要」


労働者の健康・福祉を確保するための措置が必要

企画型、専門型ともに制度を道入するためには健康および福祉を確保するための措置を協議しなければなりません。

前述の通り裁量労働制にも時間外手当や休日手当、深夜手当は発生しますので、適正に労働時間を管理し、長時間労働を抑制する勤怠管理を行う必要があります。

変形労働時間制との違い

変形労働時間制は、業務の繁閑や特殊性に応じて労働時間を週、月、年単位で調整できる制度です。労働者の裁量はなく、会社が決めた労働時間を時期に応じて働きます。

また、変形労働時間制では対象労働者の職種や業種の範囲が限定されないのも異なる点です。


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適切な勤怠時間の管理方法は

裁量労働時間制を導入し正しく運用するためには、労働時間を把握する仕組みづくりが不可欠です。長時間労働に至っていないか、深夜労働や休日労働などの労働時間を適正に把握する手段として、勤怠管理システムの活用が挙げられます。

勤怠管理の重要性

従業員数が多いほど正確な勤怠管理は難しいため、システムの活用が有効です。出退勤時刻の打刻や休暇申請、シフト作成など、従業員ごとの勤怠情報を一元管理できるシステム のことを勤怠管理システムとよびます。

正確な残業時間が把握・可視化できるだけでなく、労働時間の自動集計や給与計算システムとの連携などが可能であり、従来のタイムカード方式やExcel集計と比べて、勤怠管理にかかる工数を大幅に減らせます。


(勤怠管理システムと給与計算システムの連携イメージ)


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まとめ

裁量労働制の概要やメリット・デメリット、導入する際の注意点などを解説しました。

裁量労働制は限られた業務にのみ適用できますが、労働基準法の定める法定労働時間を超える場合や深夜・休日の勤務には時間外割増賃金が発生するため、従業員の労働時間管理が欠かせません。

複雑な残業時間の計算方法や必要な手続きなどを十分理解した上で、制度を導入・運用していきましょう。


>勤怠管理システムの導入事例はこちら。 

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