令和6年基準(公益法人会計基準)収支予算書はどう変わる?

収支予算書とは、1年間の組織活動に必要となる収入と支出の計画を金額で示す書類です。
組織が「どの期間に、どの事業へ、どれだけの資金を充てるのか」を明確にし、適切な予算管理を行うために作成されます。
本記事では、「公益法人制度改革」および「令和6年基準(新会計基準)」により、収支予算書の扱いにどのような整理が必要となるのかを解説します。
参考として、公益法人認定法施行規則第48条、公益法人インフォメーションFAQ、内閣府メールマガジン223号に記載された内容をもとに考え方をまとめています。
法令に基づく収支予算書の要件と位置づけ
新会計基準における収支予算書は、公益法人認定法施行規則第48条第1項から第5項までの定めに基づき作成する必要があります。
ただし、以前の様式であっても、同条の規定に沿って作成されている場合には、引き続き使用することが可能です。
この条文により、収支予算書は次の目的を持つ書類として位置づけられます。
- 公益目的事業、収益事業等の実施計画を把握する
- 必要な経費および財源の状況を示す
- 行政庁が法人の運営の適正性を確認するための資料となる
公益法人インフォメーションFAQにおける予算書の考え方
FAQでは収支予算書について、次の考え方が示されています。
〈参考〉【公益法人information】問Ⅲ-5-②(公益法人の収支予算書)
質問 | 行政庁へ提出する収支予算書について、令和6年公益法人会計基準を適用する場合、令和6年公益法人会計基準の活動計算書に準拠した「収支予算書」を作成することが必要であるか。また、令和6年公益法人会計基準の様式を基に収支予算書を作成する場合、事業費及び管理費の形態別分類が不明になるが、問題ないか。 |
回答 | 行政庁へ提出する公益法人の収支予算書については、公益法人認定規則第48条に沿って作成する必要があるが、その様式については、「〇〇会計基準の様式に準拠すること」などの指定はない。ただし、令和6年公益法人会計基準を適用するのであれば、予実管理の観点から、相応する様式(令和6年公益法人会計基準に合わせた収支予算書)で作成することが望ましい。 また、令和6年公益法人会計基準の活動計算書の様式で収支予算書を作成する場合、事業費・管理費の形態別分類は求められていないが、公1、公2等の機能別分類に加え、形態別分類での細目や指定純資産の部と一般純資産の部に分けるなど更に細目を設けることも妨げられない(ガイドライン第5章第2節第1(1)参照)。 |
上記のようにFAQでは、収支予算書について 「一定の様式に限るものではない」と明記されています。行政庁が法人の事務・事業および財務状況を把握できるよう、
事業区分・財源区分・支出計画等が適切に表示されていることが求められます。
FAQの方針として、
様式は自由度があるが、内容は48条の趣旨を満たす必要があるという点が確認できます。
公益法人メールマガジン第223号で発信された収支予算書の様式について
内閣府が2025年7月23日付で配信した「公益法人メールマガジン第223号」では、
令和6年会計基準における収支予算書の様式について、次のように示されています。
旧公益法人会計基準(平成20年基準)の「正味財産増減計算書内訳表」をもとに
作成している法人であっても、
48条で求められる記載内容を満たしている
事業計画・収支の見通しが分かるようになっている
といった点が押さえられていれば、引き続き同じ様式で提出して問題はない。
また、令和6年会計基準に基づいて計算書類を作成する場合、下記のような選択が
考えられる。(いずれもの場合も48条の内容を満たしているか確認が必要)
⑴活動計算書の様式により作成する
⑵活動計算書の注記である「会計区分及び事業区分別内訳」の様式と
「財源区分内訳」の2つを用いて作成する。
⑶活動計算書の注記である「会計区分及び事業区分別内訳」の様式に
指定純資産区分の活動も含めた法人全体の収支予算書を作成し提出することに
なるが、⑵⑶の方法を利用して一般純資産の部と指定純資産の部を分けることも可能
また、上記のように予算書として「正味財産増減計算書内訳表」を使用していた公益法人では、
経常費用を形態別分類(※₁)で表示する様式が一般的でした。
しかし、令和6年会計基準では、活動計算書の経常費用は活動別分類(※₂)で表示することが求められています。
つまり、費用を「どこの活動に使ったか」という観点で示す必要があります。
この違いにより、「予算管理は形態別分類で行っているのに、書類は活動別分類で作らないといけないの?」と疑問に思う法人もいるかもしれません。
この点について、内閣府のFAQ(問Ⅲ‐5-(2))では次のように説明されています。
➡ 上記(1)~(3)の予算書様式を利用している場合でも、活動別分類の科目に“形態別分類の細目”を追加して作成・提出してよい
つまり、
活動別分類(新基準)をベースにしつつ、従来どおり形態別分類での管理もしやすい形にアレンジしてOKという柔軟な運用が認められています。
※₁ 発生費用の形態に着目して科目を分類する方法。(例)役員報酬、貸借料、減価償却費など
※₂ 活動別分類とは、科目分類の一つでその活動に注目し、活動ごとに分類する方法。(例)奨学金給付事業費、ビル賃貸事業費など
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収支予算書作成で押さえておきたいポイントまとめ
ここまでの内容を踏まえ、収支予算書を作成する際に確認しておきたいポイントは、次のとおりです。
☑ 公益法人認定法施行規則第48条の趣旨を満たすことが絶対条件
☑ 令和6年基準の「活動計算書」と整合性を持たせる
☑ 予算書の様式は法人が選択できる
☑ 旧様式の継続使用も可能
☑ 自法人の事業計画や内部管理に照らして、実務上“運用しやすい形になっているか”が重要
以上のポイントを押さえて収支予算書を作成すれば、法令要件を満たしつつ、内部管理や事業運営にも役立つ予算書を整備できます。法人の実態に合わせた使いやすい形式を選び、実務に活かしていきましょう。
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