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固定残業(みなし残業)制度とは? 導入のメリットや注意点を解説

固定残業代とは、あらかじめ設定された一定の残業時間に応じた定額の残業代が支払われる制度で、みなし残業代とも呼ばれます。

企業によって、固定残業手当、定額残業代など様々な名称で呼ばれています。固定残業代はあくまで見込み額を支給するものですので、実際の残業時間に応じて計算した残業代が固定残業代の額を超えた場合は、企業はその超過額を支払う必要があります。

この記事では、固定残業(みなし残業) の制度概要やメリット・デメリット、導入する際の注意点などをわかりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.固定残業(みなし残業) 制度とは
    1. 1.1.固定残業(みなし残業)の上限 
  2. 2.固定残業制とみなし労働時間制の違い
    1. 2.1.みなし労働時間制
    2. 2.2.事業場外労働のみなし労働時間制
    3. 2.3.企画業務型裁量労働制とは
    4. 2.4.専門業務型裁量労働制とは
    5. 2.5.固定残業(みなし残業)制とみなし労働時間制 の違い
  3. 3.固定残業(みなし残業)制導入のメリット・デメリット
    1. 3.1.メリット
    2. 3.2.デメリット
  4. 4.固定残業代(みなし残業代)で違法になるケース
    1. 4.1.最低賃金を下回っている
    2. 4.2.みなし残業時間が45時間を超えている
    3. 4.3.就業規則などに詳細が明記されていない
  5. 5.固定残業(みなし残業)制度を導入する際の注意点
    1. 5.1.就業規則への明記および周知
    2. 5.2.上限時間など法の規制を遵守
    3. 5.3.従業員の労働時間の把握
  6. 6.適切な勤怠時間の管理方法は
    1. 6.1.勤怠管理の重要性
  7. 7.まとめ

固定残業(みなし残業) 制度とは

固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず毎月固定で支給される所定の時間分の残業代のことをいいます。

例えば、月20時間の時間外労働分の給与を含む条件で、月25時間の時間外労働を行った場合、使用者は労働者が追加で働いた5時間分の給与を上乗せして支払う義務があります。


(例:基本給+固定残業代20時間分を含んで給与支払いをする場合)


仮に、基本給に加えて固定残業代20時間分を含んで給与支払いを行う条件の会社があるとします。

Aさんが月に25時間の時間外労働を行なった場合、Aさんははみ出した5時間分の給与を受け取ることができます。

一方、Bさんの時間外労働が月18時間で済んだ場合でも、元々設定されている20時間分の固定残業代が2時間分減額されることはありません。

固定残業制度での注意点は、あらかじめ定められた時間を超えた残業が発生した場合には、 その超えた部分に対しては残業代を支払うことになる点です。


固定残業(みなし残業)の上限 

労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間と定めており、それを超えて従業員を働かせる場合は36(サブロク)協定を締結することになっています。

特別条項付き36協定を締結すれば、45時間を超えることも可能ですが、あくまで臨時的・特別的な事情がある場合に限られます。

そのため、恒常的に行われることが想定される固定残業時間の上限は、月45時間であると考えられ、これを超える場合には一部または全部が無効と判断される恐れがあります。


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固定残業制とみなし労働時間制の違い

みなし労働時間制

みなし労働とは、みなし労働時間制に基づく考え方で、労働時間の計算が難しい場合に、実際の労働時間にかかわらず特定の労働時間を働いたものと「みなす」制度です。この制度を導入すると、基本的に時間外労働があったとしても「残業手当」として残業代を支払う必要はありません。

みなし残業(みなし労働時間制)が適用される制度は「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制」の2種類があります。


(みなし労働時間制の種類)

(みなし労働時間制)

種類​​​​​​​

対象職種

事業場外みなし労働時間制

  • 営業職や記者など会社の外で働くため、労働時間の計算が難しい職種。
  • 基本的に「監督者の目が届くか」「労働時間の計算が困難であるか」という2点が考慮される。

企画業務型裁量労働制      

  • 事業運営に関する企画・調査・分析の業務。
  • 労働者の裁量にゆだねる必要があると客観的に判断でき、広範な裁量が労働者に認められている業務。
専門業務型裁量労働制
  • 新商品・新技術・人文科学・自然科学に関する研究開発
  • 情報処理・設計業務
  • 取材・編集・番組制作・ディレクター/コピーライター業務
  • デザイン考案の業務
  • システムコンサルタント業務
  • 公認会計士業務・証券アナリスト業務・M&Aアドバイザー業務

  • 大学における教授研究の業務
  • 弁護士業務・建築士業務・中小企業診断士業務 など

順番にみていきます。

事業場外労働のみなし労働時間制

事業場外労働のみなし労働時間制は、労働基準法第38条の2に定められた社外での仕事が多く、実際の労働時間の把握が困難な業種・職種向けの制度です。

企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制は、特定の事業に対する企画・立案・調査・分析の業務を対象とし、対象となる業務が存在する事業場のみで導入可能です。

想定される職種には、経営部門の企画職・人事や財務の調査、分析部門・財務・広報などがあげられます。

専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制は、手段や時間配分など業務遂行のほとんどを従業員の裁量に委ねる専門的な業務に適用されます。

この制度を導入できるのは、システムエンジニア・プログラマー・研究開発者・編集者・新聞記者・デザイナー・建築士・税理士など19職種のみです。

固定残業(みなし残業)制とみなし労働時間制 の違い

固定残業制は残業時間に関する決まりごとであるのに対し、みなし労働時間制は、労働基準法で定められた法律で、所定労働時間に関するものです。ここが大きな違いです。

固定残業制では、見込んだ時間数を超えて時間外労働をした場合、その分の時間外手当を支払う必要があります。 一方、みなし労働時間制では、みなし労働時間を超えて残業した場合には、超過した時間分の残業代が支払われます。

また、みなし労働時間制度は、所定の要件を満たさないと認められませんが、固定残業代制度は、職種に関わらず、どの企業でも導入できるところも違いの1つです。


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固定残業(みなし残業)制導入のメリット・デメリット

固定残業(みなし残業)制を導入する再は、自社にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを十分理解する必要があります。

メリット

企業が固定残業代制度を導入するメリットは2つ挙げられます。

  • 人件費の予測がしやすいこと
  • 残業管理の負担を減らせること

固定残業代制度の会社側のメリットとしては、人件費の見通しが立てやすい点が挙げられます。また、固定残業代制度のもとでは、従業員が労働時間の削減に取り組むケースが多いです。

デメリット

企業が固定残業代制度を導入するデメリットは2つ挙げられます。

  • 人件費が上昇する可能性がある点
  • 長時間労働を助長する恐れがある点

みなし残業は、「残業代を支払わなくても良い」制度ではなく、最初から一定レベルの残業代を含めた給与を支給する制度です。あまり残業が発生しない企業では、むしろ人件費が上昇する原因となりうるでしょう。

また、従業員や管理職が固定残業代制度を正しく理解していない場合には、違法な長時間労働や残業につながる恐れもあります。


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固定残業代(みなし残業代)で違法になるケース

最低賃金を下回っている

地域別最低賃金は、時間で定められており、固定残業代を採用していても適用されます。

アルバイトやパートタイムの従業員だけでなく、正規雇用の従業員に対しても、最低賃金を下回る基本給を設定することはできません。

そのため、固定残業代の計算において、時間あたりの賃金が最低賃金を下回っている場合には、最低賃金法違反となります。この場合には、適用を受ける都道府県に応じた最低賃金額以上に設定し直さなければなりません。

参考:最低賃金法|e-Gov法令検索

みなし残業時間が45時間を超えている

労働基準法の改正により、時間外労働は1か月で45時間、年間360時間の上限が設けられました。

みなし残業は「毎月一定の固定された時間の残業代までは給与に含む」制度ですが、仮に固定残業が45時間超に設定されていた場合、常に45時間を超える残業を認めることになってしまいます。

45時間超の残業は従業員の健康被害の要因になり、また長時間労働前提の契約は公序良俗の観点からも問題があります。基本的にみなし残業時間が45時間を超えないよう、労務担当者は注意が必要です。

就業規則などに詳細が明記されていない

固定残業代制度を導入する場合には、就業規則に明記することが必要です。また、ただ明記するだけではなく、その内容を周知し、従業員に制度を理解させることも必要となります。


固定残業(みなし残業)制度を導入する際の注意点

就業規則への明記および周知

固定残業代制を導入する場合には、従業員がどのような給与形態なのかを理解できるように、就業規則に明記することが必要です。また、みなし残業の時間数が何時間なのかをはっきりさせ、基本給と残業代がそれぞれいくらなのか明らかにしておくことも重要です。

ただ明記するだけではなく、その内容を周知し、従業員に制度を理解させることも必要となります。

上限時間など法の規制を遵守

固定残業時間であっても上限は存在します。また、算出された固定残業代が最低賃金を下回ることも許されません。設定を予定している固定残業時間や固定残業代が法に則ったものか確認しましょう。

従業員の労働時間の把握

どのような労働契約であっても、会社側は従業員の労働時間を正しく把握しなければいけません。

固定残業代制度導入前に、どの程度の残業時間が自社内で発生しているのか把握することが必要です。しっかりと残業時間を把握しておかなければ、慢性的な固定残業時間の超過や、不要な長時間の残業時間を設定することになってしまいます。


適切な勤怠時間の管理方法は

企業が法律に抵触しない形で、みなし残業(固定残業)制度を導入するためには、従業員の労働時間の管理を厳密に行わなければなりません。

従業員の残業時間を確認し、規定の時間を超過した場合は、残業代を支払う必要があります。そのためにも、正確な勤怠管理システムもあわせて導入したいところです。

勤怠管理の重要性

従業員数が多いほど正確な勤怠管理は難しいため、システムの活用が有効です。出退勤時刻の打刻や休暇申請、シフト作成など、従業員ごとの勤怠情報を一元管理できるシステム のことを勤怠管理システムとよびます。

正確な残業時間が把握・可視化できるだけでなく、労働時間の自動集計や給与計算システムとの連携などが可能であり、従来のタイムカード方式やExcel集計と比べて、勤怠管理にかかる工数を大幅に減らせます。

ウェブ打刻システムや、みなし残業の管理・計算に必要な情報を勤怠集計機能により自動で取りまとめられます。正確な労働時間の管理に勤怠管理システムをぜひご活用ください。


(勤怠管理システムと給与計算システムの連携イメージ)


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まとめ

固定残業代制度は、業務効率化や給与計算の簡便化など、適切に運用すれば会社にとってメリットをもたらす制度です。

しかし固定残業代の運用を巡っては、上限を超過した残業時間の設定や、超過分の未払いといった労使間のトラブルにもつながりやすい制度です。違法性を疑われないためにも、勤怠管理を入念に行いましょう。

労働時間に関するルールを遵守することが重要です。 必要な手続きなどを十分理解した上で、制度を導入・運用していきましょう。


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